文化の日 音楽祭「アダチ・藝大・LIVE!」2024が開催されました

11月3日(月・祝)東京藝術大学 千住キャンパス スタジオA

本公演は今年で3回目となり、爽やかな秋晴れの下、約200人近くもの多くの方に来場いただきました。
今年も奏者自らが選んだプログラムに加えて、本学在学生が作曲したADACHIの音列による新曲4つが演奏されます。ADACHIの音列とは、足立をローマ字にした時のADACHIをドイツ音名で読んだ際、ラレラドシと読むことから、ラレラドシを基にしたメロディーのことを指します。

第1部は、尾城杏奈さんによるピアノ独奏から始まりました。
プログラムは、
C.ドビュッシー《花火》前奏曲集 第2巻より
C.ドビュッシー《喜びの島》
鹿田愛《秋桜に誘われて…》〜ADACHIの音列による〜
M.ラヴェル《ラ・ヴァルス》
でした。

フランス留学中である尾城さんが選曲したプログラムはフランス印象派の作曲家による作品が中心となり、その繊細で豊かなハーモニーが会場を包み込みました。また、鹿田さんの新曲は爽やかで明るい秋を想起させる、公演当日の秋晴れにぴったりな作品で、尾城さんが紡ぐ美しい音色によって初演されました。

続いては、メープル木管五重奏団による演奏でした。メープル木管五重奏団は本学卒業者である、山本英さん(フルート)、沖響子さん(オーボエ)、春田傑さん(クラリネット)、小田光さん(ファゴット)、松原秀人さん(ホルン)によって構成されています。

プログラムは、
F.プーランク(編曲 G.エマーソン)《ノヴェレッテ》
小林知夏《Iはいない》
C.ニールセン《木管五重奏曲》
でした。

《ノヴェレッテ》は元々ピアノ用に書かれた曲が木管五重奏用に編曲されており、生き生きとした旋律と合奏によるふくよかなハーモニーが混ざり合い、ピアノ版とはまた違った魅力があります。次に小林さんによる新曲が披露されました。ドリア旋法を用いたミニマルミュージックの形式による木管五重奏曲で、ADACHIの音列が繰り返されつつも目まぐるしく変わっていく展開が聴きどころでした。

3曲目はニールセンの《木管五重奏曲》でした。3楽章から成る大曲で、不協和な和音が鳴る場面からコラールの美しいハーモニーが鳴る展開もある表情豊かな曲が、公演第1部の最後を締めくくりました。

第2部は尺八五重奏から始まりました。
本学卒業生の青木滉一郎さん、瀧北榮山さん、中島孔山さん、長谷川将山さん、吉越瑛山さんによる演奏です。尺八はフルート族の気鳴楽器で、曲に合わせて様々な長さのものを持ち替えて演奏します。今回はFis管やE管、C管など様々な尺八が登場しました。

プログラムは、
永野太紀《禱(いのり) 》 – 尺八五重奏のための
冷水乃栄流《飛翔/追想》
永井秀和《讃美歌と舞曲》 第一楽章
石川健人《また光ってはきえて…》
でした。

最初に永野太紀さんによる新曲が披露されました。邦楽器特有の音色を生かしたハーモニーから始まる曲ですが、細かなパッセージを奏する際はフルートのような音も聴こえてきます。尺八という楽器の特性を楽しむことができる曲でした。

2曲目の《飛翔/追想》は鳥が飛び立ち、多彩な飛行模様を織りなす様子を描いた作品で、美しい和音が会場に響き渡ります。3曲目は《讃美歌と舞曲》が演奏されました。讃美歌と舞曲はどちらも西洋音楽の形式ですが、それらの形式が邦楽器によって演奏されるという点で聴きごたえのある曲です。4曲目は若手作曲家・石川健人さん作曲の《また光ってはきえて…》です。弱強弱と展開されるダイナミクスと尺八特有の音色が混ざり合い、暗闇から光って消える様子が想起される儚げな曲でした。

第2部、本公演最後の演奏はピアノ五重奏です。北澤華蓮さん(ヴァイオリン)、中野美玲さん(ヴァイオリン)、衛藤理子さん(ヴィオラ)、松谷壮一郎さん(チェロ)、渡辺友梨香さん(ピアノ)による演奏でした。

プログラムは、
F.J.ハイドン《弦楽四重奏第75番》ト長調 作品76-1 Hob.III:75 第1楽章
道城翔映《ADACHI Groovin’》
A.ドヴォルザーク《ピアノ五重奏第2番》イ長調 作品81 B.155 第1楽章,第4楽章でした。

1曲目はハイドンによる弦楽四重奏から始まりました。ハイドンは弦楽四重奏の父とも言われる作曲家です。ヴァイオリンによって演奏される主題が他の楽器に受け継がれ、美しく滑らかに展開していく曲でした。2曲目は道城翔映による新曲が披露されました。私の音楽のルーツであるジャズの要素を取り入れ、リズミカルな音楽に仕上げました。途中からスウィングするようなリズムに変化するところも聴きどころの1つです。

3曲目からはピアノも編成に加わり、より一層華やかになった合奏が本公演の最後を飾ります。国民楽派の作曲家として知られるドヴォルザークですが、旋律やハーモニーはもちろん、Allegroで力強く演奏する様子からもボヘミアの民族色が感じられ、本公演の最後に相応しい演奏でした。

(文責:道城翔映)