「Music at Home第一回ピアノソロ」を配信しました。

7月6日(月)より配信

Music at Home第一回ピアノソロの配信をご覧いただきましたでしょうか?

https://alc.geidai.ac.jp/archives/movie

それぞれ作品ごとに異なる世界が広がり、全体で色とりどりの絵画を見るようです。白石さんの柔らかい音色を自宅で聴くと心から癒やされますね。

この収録は、先月6月末に藝大千住キャンパスのスタジオで行いました。6月より緊急事態宣言が解かれましたが、藝大は学生の入構は制限されており授業も多くがオンラインで行われています。感染症予防の対策を講じた上で、演奏者、音響と映像のスタッフと最小限の人数で収録しました。

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作品については白石さんが丁寧に説明してくださっていますので、聴き所を簡単に付け加えます。

バッハ’羊は安らかに草を食む’は、カンタータ作品をペトリがピアノ用に編曲したものですが、原曲の響きが忠実に再現されています。

ヘンデル’調子の良い鍛冶屋’の終盤部分は、指が絡まりそうなほど速いパッセージが続きます。白石さんの素晴らしい演奏技術によって、軽やかに華やかに盛り上がっていくところが聴き所です。

ベートーヴェン’トルコ行進曲’の変奏曲は、トルコ、つまりオスマン帝国の軍楽隊の音楽を参考に作られたものです。西洋世界には異国の音楽が魅力的に捉えられて、「トルコ風」の作品が流行しました。モーツァルトピアノソナタ第11番第3楽章にも同名の作品がありますが、両作品ともピアノ学習者によく知られています。白石さんの説明で、当時はご婦人の練習曲として作曲されたとありましたが、変奏ごとに弾きわけるのは実は至難の業です。

続いてショパン’夜想曲’ですが、バロック・古典と聴いてきた耳でこの作品を聴くと情感の豊かさに少し驚きがあるかもしれません。ペダルによる響きの伸びが存分に生かされるようになり、この時代からピアノ作品に新たな表現や魅力が加わったことがおわかりいただけると思います。

ドビュッシー’ゴリウォークのケークウォーク’は、「子供の領分」6曲のうちの一つです。ドビュッシーらしい響きがあり、様々な表情が盛り込まれ、小品でありながら魅力的な作品です。

ガーシュイン’劇場外のざわめき’は、ピアノのコンサートのプログラムに入ることは珍しいかもしれません。ただ、白石さんが弾くと他のクラシック曲と違和感なく共存してしまうのが不思議です。

音源配信のエリントンとブレイクもお聴きいただけましたでしょうか。2作品ともジャズのリズムが心地よく、聴きながら思わずリズムを取ってしまいます。

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ところで収録時、驚いた出来事がありました。数曲収録が終わったところで、白石さんが「ここがね」と仰って、鞄から道具を取り出すといきなりピアノの鍵盤部分を引き出したのです。

すると中央より少し高音の箇所をピアノを鳴らしながら調律して「そうだね」と仰ると、鳴っていったピアノの音がピタッとはまったのです。

 

実は、白石さんのお父様が調律師で、長年藝大のYAMAHAのピアノを調律なさってきた方です。そのため、白石さんもこのように気になる箇所を自分で調律なさることがあるそうです。調律のできるピアニストはそういませんので、周囲のスタッフは驚きました!

Music at Home第二回は、木管五重奏を予定しております。どうぞお楽しみに!

新型コロナウィルスの感染が拡大している状況です。皆様、くれぐれも体調にはお気をつけてお過ごし下さい。

 

調律している白石さんとその様子を見つめる田村文生先生

調律の後の白石さんの笑顔