「からたちの花々」—昭和初期の歌曲—を開催しました。

8月24日(土)昭和の家

昭和の家は、昭和14年(1939)に建てられた住宅建築で、足立区にのこる国の登録文化財です。平屋造りで、普段カフェとしても開放されている座敷があり、正面に手入れの行き届いた庭を臨みます。今回この座敷を会場に、日本歌曲のコンサートを開催しました。

昭和の家が建築されて、今年で80年ということで、建築された当時、大正から昭和初期の歌曲作品に焦点を当てました。タイトルの「からたちの花々」には、日本歌曲の父、山田耕筰の「からたちの花」以降に咲いた作品たちを紹介するという意味を込めました。コンサートは、日本歌曲のゴールデンコンビと呼ばれた山田耕筰と北原白秋の作品からスタート。「からたちの花」「曼珠沙華」「待ちぼうけ」と続きます。ソプラノの金持亜実さんの美しく豊かな声が響き、曲ごとに変わる声色や金持さんの表情にも惹きつけられます。伴奏は、松岡あさひさんです。

次に、バリトンの目黒知史さんにバトンタッチして、松平頼則の『南部民謡集』に移ります。『南部民謡集』は、松平が日本の民謡を西洋音楽の語法で作曲した作品で、「和洋折衷」の特徴がみられます。目黒さんの深い歌声で、民謡の独特なリズムが刻まれます。

ここで、ドイツリートの曲を挟みます。シューマン『ミルテの花』は、演奏会でもよく取り上げられる作品集で、「献呈」はリスト編曲によるピアノ作品がよく演奏されます。MCでは、奏者の目黒さんと金持さんにドイツリートと日本歌曲の歌い方の違いについて伺いました。

次の信時潔は、山田耕筰の一年後に生まれた作曲家で、東京音楽学校作曲家創設にも尽力した人物です。作品の中でも歌曲の数は多く、『沙羅』はそれらを代表する作品集です。叙情性あふれる「丹澤」「沙羅」「行々子」を金持さんに演奏いただきました。

そして次の葛原守は、東京音楽学校卒業後の1944年に軍隊に入り、病気にかかり亡くなりました。1939年ということで、戦争の影響が及び始めていたという社会的な背景も鑑みて、戦没学生の一人である葛原の作品「かなしひものよ」も紹介いたしました。※東京藝術大学では、2017年から「戦没学生からのメッセージ」の活動を通じて、戦没学生と彼らの作品を紹介しています。

最後に、目黒さんによる越谷達之助「初恋」、山田耕筰「この道」「かやの木山」でコンサートを終了しました。

 

コンサートが始まった頃は、窓からの景色が明るく蝉の鳴き声がBGMに響いていたのですが、終演時にはすっかり暗くなり、庭が美しくライトアップされて幻想的でした。趣深い和の空間で、柔らかい雰囲気の日本歌曲が響き、来場者の皆様にも贅沢な夏の夕暮れを楽しんでいただけたのではと思います。

MCの仲辻真帆さん

穏やかな語り口とわかりやすい内容で、とても丁寧な司会で進行していただきました。信時潔ら、昭和初期の作曲家の研究をされています。

アンコール

滝廉太郎「花」を、1、2番を演奏の二人で、3番は来場者の皆さまも一緒に合唱しました。

昭和の家の当主、平田茂様からご挨拶

昭和の家について、そして演奏会のご感想をお話してくださいました。