【公演レポート】邦楽ワークショップ「お囃子のすゝめ」

2月7日(土)東京藝術大学 千住キャンパス

2026年2月7日(土)東京藝術大学千住キャンパスにて、アートリエゾンセンター主催の邦楽ワークショップ「お囃子のすゝめ」が開催されました。
今回の講師は、本学邦楽科の盧慶順教授をはじめとする演奏家の皆様。伝統芸能という一見すると少し敷居の高い世界を、実際に楽器に触れながら身近に感じてもらおうという試みです。スタッフとして参加した筆者も、ずらりと並んだ和楽器を前にした参加者の皆さんの期待と少しの緊張が混じった表情に、身が引き締まる思いでした。

プログラムが始まると、参加者は「笛」「小鼓」「大鼓」「太鼓」の4つのグループに分かれ、それぞれ約2時間にわたる集中練習に臨みました。ここで、今回使用された楽器について少し触れたいと思います。

まずは、お囃子の中で唯一の旋律を担う「笛(篠笛)」です。その役割は歌舞伎や能の劇伴にとどまらず、祭礼の合図や、自然界の音を模した効果音的な表現まで多岐にわたります。フルートのような均質な響きとは対照的に、竹という素材特有の「掠れ」を含んだ音色が楽曲の質感を形作ります。また、西洋の十二平均律とは異なり、指穴の押さえ方や息の加減で生まれる日本特有の音階(微分音的な音程感)が、独特の風情を生み出します。

次に、リズムの根幹をなす「小鼓(こつづみ)」「大鼓(おおつづみ)」です。小鼓は左手で紐を締めたり緩めたりして音程を調節する繊細な操作が求められ、一方の大鼓は、革を乾燥させて硬い音を出すのが特徴です。この二つが掛け声と共に組み合わさることで、お囃子特有の緊張感のある「間」が生まれます。

小鼓

大鼓

そして、全体をリードする 「太鼓(締太鼓)」です。 二本の撥(ばち)で打ち鳴らされる音は非常に明快で、合奏のテンポを統率する役割を持っています。

太鼓

筆者が見て回っていると、最初は慣れない掛け声や独特の間に驚く表情が見られましたが、講師の先生方の熱心な指導により、会場の空気はみるみるうちに熱を帯びていきました。

約2時間の練習を経て、最後には参加者のみによる全体合奏が行われました。 演奏されたのは、《さくらさくら》や広く親しまれている坂本九さんの《上を向いて歩こう》といった楽曲です。古典的なお囃子のリズムをベースに、馴染みのあるメロディが和楽器の音色で紡がれていく様子は、このワークショップならではの試みです。 最初は個別の練習に集中していた参加者の皆さんが、合奏では互いの音を聴き合い、一つの音楽を形にしていく。その変化を間近で見た筆者にとっても、非常に感慨深い瞬間でした。

今回は、伝統芸能を身体感覚を通して学ぶ貴重な機会となりました。筆者にとっても、プロの技と参加者の皆さんの反応を間近で見守ることができ、日本の音文化に対する理解を深める一日となりました。

文責:音楽環境創造科2年 中野湧斗