【公演レポート】木管五重奏コンサート vol.2「星と音が彩る夜」が開催されました

2月3日(月)ギャラクシティ まるちたいけんドーム(プラネタリウム)

東京藝術大学 音楽学部音楽環境創造科の永野太紀です。私は大学で作曲を専攻し、雅楽の特徴を取り入れた管楽作品の分析や制作に取り組んでいます。

このたび、2025年2月3日(月)にギャラクシティ まるちたいけんドームで開催された「星と音が彩る夜」にスタッフとして参加しました。

本公演は、東京藝術大学アウトリーチ・コンサート「メープル木管五重奏団 公演」の第2弾になります。 今回のコンサートは、プラネタリウムという、クラシックコンサートとしては珍しい会場で行われました。一般的なコンサートホールとは異なり、プラネタリウムでは、半球状のドームスクリーンに美しい星空が映し出され、音楽と映像が一体となった、幻想的で没入感のある体験を生み出すことができます。

ただその一方で、音が吸収されてしまう、反響が少ない「デッド」な環境のため、音響面で通常のホールとは違う工夫が必要でした。今回、特別に亀川徹教授と、音楽環境創造科4年の田村日向子さんが音響調整を担当され、マイクを立ててスピーカーの音を調整するなど、この会場に合ったPAを行いました。田村さんは、「この会場にあった音が自然に響くように細部の調整を重ね、左右のバランスやホールの特性に合わせた音作りを行いました」と話していました。

〇コンサートの概要

メープル木管五重奏団は、文化の日コンサートを含め、今回が3回目の公演となります。 本公演では、奏者5名が「星」や「夜」にちなんだ楽曲を厳選し、演奏しました。

1曲目:F.プーランク《ノヴェレッテ》 短編小説を意味する“Novellette”という名の通り、短いながらも充実した内容で聴きごたえのある一曲です。3篇からなる曲ですが、今回演奏された第1番ハ長調は、シンプルで軽快な旋律が魅力です。 軽快で明るい演奏に乗せて、プラネタリウムに投影されたいくつもの星座が演奏会のオープニングを彩りました。

2曲目:C.A.ドビュッシー《ベルガマスク組曲より『月の光』》 ピアノ版の原曲が有名な作品ですが、木管五重奏により彩り豊かで、温かみのある響きで演奏されました。《月の光》の生演奏を聴きながら月と星空の映像を眺めるというプラネタリウムならではの空間となりました。

3曲目:いずみたく《見上げてごらん夜空の星を》 落ち着きのあるしとやかな演奏とプラネタリウムに映し出された東京の夜空が調和し、心に響くひとときとなりました。

4曲目:R.ロジャース《サウンド・オブ・ミュージック》メドレー 『My Favorite Things』や『ドレミの歌』といった誰もが知る名曲が、プラネタリウムに映された広大な草原の景色や星空と共に演奏され、映画のワンシーンが思い起こされました。

5曲目:E.グリーグ《ペール・ギュント第1組曲》 本公演のメインともいえるこの楽曲は、『朝』『オーセの死』『アニトラの踊り』『山の魔王の宮殿にて』で構成され、イプセンの戯曲『ペール・ギュント』の物語を象徴する場面が抜粋されています。それぞれが星や夜と直接的な関係を持つわけではありませんが、映し出された空のもとで繰り広げられるペール・ギュントの物語が目に浮かぶような、叙情的かつ緊張感のある演奏でした。

6曲目:E.サティ《ジュ・トゥ・ヴ》 “Je te veux”はフランス語で「あなたが欲しい」という意味で、フランスの景色が思い浮かぶ官能的で美しいワルツで、映し出された星空と甘美な演奏が、ロマンティックな空間を演出していました。 アンコール 《見上げてごらん夜空の星を》が再び演奏され、それぞれの楽器の個性が映える演奏と美しい星座たちがプログラムの最後を飾りました。

〇プラネタリウムでのコンサートの可能性

今回の公演では、星空だけでなく多様な映像も投影され、プラネタリウムが「星を見る場所」にとどまらず、「映像表現の場」としても大きな可能性を持っていることを強く感じました。音楽と映像を組み合わせることで、まだまだ新しい表現の可能性が広がっていることに、非常にワクワクしました。 一方で、プラネタリウムは本来暗い環境で星を楽しむための施設なので、明るい映像が見づらいという課題も感じました。今回は、木管五重奏に適した音響空間を作り上げた一方で、大規模編成には空間が小さすぎるように感じました。 今後、こうした視覚情報と音楽を融合させた演奏会がどのように発展していくのか、とても楽しみにしています。